本プロジェクトは、森づくりを行う「あおばくん」とヨタカの「ヨタ子」の会話形式でお送りしていきます。
実際の森の変化に応じて移り変わっていくストーリーをどうぞお楽しみください!
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森の便り
第一話ヨタ子の人生~ヨタカってどんな生き物?~
前回、ヨタカのヨタ子と出会い、ヨタ子のための森づくりをやると決めたあおばくん。でも実際ヨタカってどんな生き物なの!?ヨタ子さんに聞いてみました。
ヨタカの森 第一話
ヨタ子の人生~ヨタカってどんな生き物?~
ヨタ子さんたちが子育てできる森をつくるために、ちょっと君の生涯について聞かせてもらえる? 日本での生活とかさ。
うん、もちろんよ。私は昼間は枝に沿ってじっとしてるの。羽は複雑な枯葉模様になってて、まるでその枝の一部みたいに見えるから、捕食者から身を守るのに役立ってるのよ。
なるほどね。夜になると活動が活発になるって聞いたけど、具体的にはどんな感じ?
そうね。夜は日没後に活動開始して、空中を飛びながら大きな口を使ってガやコガネムシ、カメムシなんかの昆虫を捕まえる。それで宮沢賢治って人が絵本にしてくれたの。鳴き声は人間が聞くと「キョキョキョ…」って、聞こえるみたい。
分かりやすいね。子育てに関してはどう? 地上の落ち葉の上に卵を産むって聞いたんだけど、ほんと?
そうなのよ!繁殖期には、巣材を使わずに下草が少なく水はけの良い場所、たとえば落ち葉が散らばってるところに直接1~2個の卵を産むの。基本的にメスが19日くらい卵を温めて、それから2~3週間で飛べるのよ。

すごいね!そんな早く飛べるようになるんだ。飛べるようになったらどうするの?
私たちは夏鳥だから、春に東南アジアの越冬地から日本に渡ってきて、繁殖期を迎えるの。夏の間は日本で縄張りを作って繁殖するんだけど、秋になるとまた東南アジアに向かって渡るのよ。つまり、春の北上と秋の南下という年に2回も長距離移動をしてるのよ。
東南アジアまでいくんだ!すごいね!人生(鳥生)でどのくらい東南アジアと日本の行き来を経験するの?
平均的な寿命は野生ではだいたい4~5年くらいとされてるから、仮にその通りなら生涯で10回前後、場合によっては個体差があってもっと多いこともあるかもしれないわね。
ということは、まとめると、君は昼間はじっとして周囲に擬態し、夜は活発に昆虫を捕る。そして繁殖期には地上に卵を産み、毎年春と秋の渡りを行う。寿命は平均して4~5年くらいってことだね。
その通りよ。私たちヨタカは、限られた生涯の中で環境の変化に対応しながら、こうした生態学的な特徴で生活してるの。
なるほど。よくわかったよ!気持ちよく子育てしてもらえるようにこれからがんばるね!
こんにちは!青葉組の中井です!
今回、ヨタカの森をつくるにあたって、前世は鳥だったと思われる鳥に詳しい社員(鈴木)に聞いたり、調べてみたりして、ヨタカの生態について調べたので、もう少し詳しく解説していきますね!
日本におけるヨタカの生態
ヨタカ(夜鷹、学名 Caprimulgus indicus)はヨタカ目ヨタカ科に属する野鳥で、日本では主に夏季に見られる渡り鳥です。宮沢賢治の童話『よだかの星』にも登場することで知っている方も多いのではないでしょうか。全長は29cmほどでタカと言われるわりには大きくないです。タカは猛禽類ですが、ヨタカは鳥類!で虫が主食です。
ヨタカの生活
夜行性で地上に巣を構える独特の生態をもちます。昼間は木の枝に沿ってじっと止まり、まるで木のこぶのように周囲に擬態して休息します。平地から山地までの自然林・二次林・植林地などで主に生息しますが、農耕地や草地、河川敷、湖沼周辺、市街地の公園など比較的開けた環境でも姿が確認されることがあります。特に**林床の下草が少ない明るい森林環境**(伐採直後の若い植林地やマツ混交林、落葉広葉樹林など)を好む傾向が報告されています(多田,2018)。
ヨタカは全身が複雑な枯葉模様の羽毛に覆われた鳥で、昼間は木の枝に沿ってじっと止まり、まるで木のこぶのように周囲に擬態して休息します。
夜行性であり、日没後に活動を開始する。夜間に大きく口を開けて飛翔しながらガやコガネムシ、カメムシやバッタなどの昆虫を空中で捕らえて食べます。夜の闇に溶け込むその姿から、「Jungle Nightjar」という英名が付けられるほどです。
鳴き声は「キョキョキョ…」という単調な音を夜間に繰り返し発し、縄張りの主張などをします。


ヨタカは何年生きるの?
野生下におけるヨタカの寿命については不明な点が多いです。個体を一生涯にわたって追跡することは難しく、信頼できる長期の寿命データはほとんど得られていないのが現状。日本国内で行われている鳥類の標識再捕獲調査(バンディング調査)の記録によれば、野生のヨタカの少なくとも4年程度の生存が確認されている (吉安他、2020)。実際、標識されたヨタカの再発見例では放鳥後「4年1か月」生存した個体(オス)や「4年0か月」生存した個体(メス)が報告されており、少なくとも4,5年間は生き延びる個体がいることがわかっています。
ヨタカの渡り
ヨタカは**季節的な長距離渡り**を行う鳥です。冬季になると東南アジア方面(インドシナ半島やマレー半島など)へ移動して越冬することが知られています。春(4~5月頃)に東南アジアの越冬地から日本列島に飛来し縄張りを形成、初夏に繁殖を行った後、秋(9~10月頃)になると繁殖地の日本を離れ再び南方へ渡ってゆきます。
渡りの時期には農耕地や都市公園など普段はいない場所で目撃されることもあり、これは移動の途中で一時的に立ち寄って休息・採食している個体と考えられます。
以上の渡りパターンから、ヨタカは**年に2回(春と秋)の渡り**を行うことになると考えられています。言い換えれば、個体ごとに毎年春の北上と秋の南下という二つの長距離移動を繰り返す。ということは、例えば平均寿命が約5年程度であると仮定すれば、**生涯でおよそ10回前後**の渡りを行う計算になります。もちろん実際には個体ごとに生存率が異なるため一概には言えないものの、少なくともヨタカはその一生において**数回から十数回**程度の渡り移動を行うと推測されます。このように寿命と渡り習性を踏まえると、ヨタカは限られた生涯の中で幾度も長距離飛行を重ねているようです。
ヨタカの子育て
ヨタカは繁殖期に交尾を行い、春4~5月頃にに越冬地から日本に渡来し、初夏にかけて繁殖活動を開始します。この時期、オスは繁殖地に到着後、交尾相手を求めたディスプレイ行動を開始します。ディスプレイ行動は求愛期に翼をV字状に広げながら行います。フライトデイスプレイは滑空,羽ばたき,ホバリングを組みあわせた飛行をします(多田、2018)。
夏の繁殖期には巣材を用いずに地表の落ち葉の上などに直接1~2個の卵を産み、主にメスが19日間ほど卵を抱えて温め、わずか15日ほどで飛べるようになり、17日目には巣の周辺から姿を消すようです(多田、2018)。9~10月にはまた子連れで東南アジアなど南方へ渡っていきます。
分布は九州から北海道まで広範囲にわたり、かつては里山の環境でも普通に見られましたが、近年は生息地の変化により個体数が減少しつつあり、環境省レッドリスト「準絶滅危惧」指定されています。

ヨタカの巣の条件
ヨタカは巣材を使わず地上に産卵するため、営巣環境にこだわらないように見えがちですが、実際には以下の条件が共通して認められるそうです。
– **草のない場所:** 巣の直近に草が生えていないことが基本条件で、下草が密な林床や草地は避ける。
– **水はけの良い場所:** 抱卵部は腐葉土、マツの葉、小枝、小石が薄く積もった水はけの良い場所で、雨後に水が溜まる場所は不適。
– **上空が開けた場所:** 巣の上空は樹冠に覆われず、上空からのアプローチが容易な環境が好まれる。
– **逃げ込み先の確保:** 巣の近くに藪や林があり、接近した際に親や幼鳥がそこに逃げ込めるようになっている。
こうした条件は、山頂や稜線、伐採跡地の林縁、崩落で林冠が開いた場所、積雪地の落葉広葉樹林などがよい模様(藤巻 1973、柿澤・小海途 1999、多田ほか 2015、内田 2011)。
実際、僕たちがこれから進めるヨタカの森の伐採跡地においても、上部に逃げ込み先となるケヤキなどの広葉樹林があり、山焼きをしていて草も少ないため、ヨタカが実際に来てくれるのではないかと考えて設計しました。
ヨタカをみてみよう
実際に当社の現場で撮影されたヨタカの様子です。わかりにくいですが、中心あたりにいます。(草刈りをしているので刈り払い機のエンジン音が聞こえており無音でみてみてください。)
羽を閉じたり開いたりしていますが、これは擬傷(ぎしょう)行動といって、羽をばたばたさせてケガしているフリをして、敵(撮影者の三浦)の注意を巣からそらして雛を守ろうとしています。
森の便り-今日の一枚
現場は違いますが、同じ村上で現場の近くに生えていたアブラチャンの実です。昔はこの実の油を使って灯りにしていたそうですよ。森の掲示板を購入頂いた方にはプリントしてお届けします。

参考文献
主にどういった条件がヨタカのために必要か、以下の文献が大変参考になりました。また何か記載内容に間違い等ありましたら、お手数ですが、こちらご連絡いただければ幸いです。info@greenforesters.jp
– 多田英行.2018.bird reserch news vol.15 No.4 ヨタカ
– 中村 登流・中村 雅彦. 原色日本野鳥生態図鑑 陸鳥編
– 吉安京子・森本元・千田万里子・仲村昇.2020. 鳥類標識調査より得られた種別の生存期間一覧、山階鳥学誌 ( J. Yamashina Inst. Ornithol.),52: 21‒48,
– 藤巻裕蔵. 1973. ヨタカの営巣2例. 鳥 22: 30-32.
– 柿澤亮三・小海途銀次郎. 1999.日本の野鳥 卵と巣図鑑. 世界文化社, 東京.
– 多田英行・大川洋子・香西宏明. 2015. アカマツ林でのヨタカの営巣2例. しぜんしくらしき(95): 5-6.
– 内田博. 2011. ヨタカの抱卵行動. 日本鳥学会誌 60: 238-240.