ここは、とある伐採跡地。伐採したあとに赤かぶづくりを行うため山焼きも行われた場所です。あおばくんを中心に、伐採後から森林の再生活動をはじめます。その活動やいかに…?ヨタカのヨタ子と実際の現場ではじまる物語をどうぞお楽しみください。
UERUT FIELD
私たちがつくる森
ヨタカの森
新潟県村上市
ヨタカの森
新潟県村上市
ここは、とある伐採跡地。伐採したあとに赤かぶづくりを行うため山焼きも行われた場所です。あおばくんを中心に、伐採後から森林の再生活動をはじめます。その活動やいかに…?ヨタカのヨタ子と実際の現場ではじまる物語をどうぞお楽しみください。
青葉組に所属し山と山仕事をこよなく愛する若き林業マン。
ヨタカ目ヨタカ科の猛禽類ヨタカの若きママ。全長29cmほど。キョキョキョと鳴きます。
出会い
空をさまようヨタ子と青葉くん
森づくりを行う「あおばくん」とヨタカの「ヨタ子」。二人はひょんなことから出会います。
いい場所がないなぁ…どこも巣を作れそうにないよ。
やあ、どうしたんだい? 何か困ってるの?
実は…わたし、ヨタカなの。巣を作れる場所を探しているんだけど、なかなか見つからなくて困っているの。

ヨタ子の困りごと
巣作りできる場所がない!?
巣を作る場所? このあたりにはたくさん森があるのに?
森はあるけれど、巣を作るのにいい環境がないの。私たちヨタカはね、地面の上に直接卵を産むの。木の上じゃなくて、落ち葉の上にそっと1~2個の卵を産んで、地面で子育てをするのよ。
えっ、木の上じゃなく地面に巣を?それじゃあ安全な場所を探すの大変そうだ。
そうなの。水はけがよくて葉っぱや小枝が散らばったところがいいの。木の枝等の巣材も使わずに地面に直接産みたいんだ。私たちは体の色が落ち葉や地面にまぎれて目立たないようになっていて、少し開けた落ち葉の地面が理想なんだ。
昔は林が明るく開けた森や里山も多くて、先輩のヨタカたちから“あの林道の終点の広場は最高だよ”なんて聞いたものだけど…最近は里山や草地も減ってしまってコンクリートばかりになったりで、巣を作れる場所が減ってしまったわ。おかげで仲間も減っちゃって…。
なるほど…。森や自然の環境の変化でヨタカが住みにくくなってるんだね。

あおばくんの提案 – ヨタカのための森づくり計画
ヨタ子さん、実は僕、森を元気にするために植林の仕事をしているんだ。君の話を聞いて、この場所をヨタカが住みやすい環境にできないかって思ったよ
えっ、本当⁉ そんなことできるの?
うん!僕の仕事は森をつくることなんだけど、やり方を工夫してヨタカのみんなが安心して暮らせる森にできないかと思うんだ。
わあ…!ぜひお願いしたいわ。でも具体的にどうやって…?
僕たちの作業のスケジュールをちょっと変えて、『ヨタ子さんのための森づくりスケジュール』を立てて、ヨタ子さんが巣を作れる環境に変えられないかと思ったんだ。
わたしのための森づくりスケジュール!? なんだかワクワクする名前ね!
森づくりどうやる?
実はこの前、伐採現場をいくつか調査して君たちヨタカの子育てにぴったりそうな伐採跡地を見つけたんだ。
ほんとに?!うれしいわ!
今は3月末、今年はまだ現場には雪があって現場作業には入れない。雪の融け具合次第だけど、できれば君たちが日本に戻ってくる頃までに、地面を整備しておくよ。伐採した場所の地面に落ちている枝や葉っぱを適度に片付けて、背の高い草が生い茂りすぎないように管理するよ。そうすれば地面にちょうどいいくらいの落ち葉と開けたスペースができるはずさ。

枝葉のベッドがある地面…想像しただけで心地よさそう!石なんかも適度に残しておいてちょうだい。卵を産むのにピッタリだわ。
それから夏。君たちヨタカがそこで実際に繁殖する季節だね。この時期はできるだけ静かに見守ることが大事だ。森づくりといっても、夏は大がかりな作業は控えて、代わりにボイスレコーダーだけ設置して遠くから定期的に様子を確認するよ。夜には少し観察させてもらって僕も空を見上げて、ヨタ子の「キョキョキョ…」って鳴き声を聞くのを楽しみにするね!
きゃっ、恥ずかしいわ…でもちゃんと見守ってくれるのは安心ね。虫がいっぱい飛んでくれたら私たちもごちそうに困らないし、子育ても順調にできそう!
最後に秋。君たちがまた南へ旅立つ前に、生まれたヒナたちも十分育つよね。秋には繁殖期が終わった森をもう一度整備するんだ。例えば、夏の間に伸びた草木を改めて刈り込んで、来年の春に向けて環境をリセットする。それから、間引きした場所に植えた苗木の様子もチェックするよ。将来的には森全体が元気になるように木も育てつつ、でも一部は常に陽の当たる明るい空き地として維持する…そんなバランスをとるんだ。
秋もちゃんと手入れしてくれるのね。一年中計画的に進めてくれるなんて、本当に至れり尽くせりだわ!
ヨタ子の希望 – 安心して子育てできる場所をつくるぞ
あおばくんのおかげで希望がわいてきたわ!そんな森ができたら、私たちヨタカも安心して暮らせるわ。
うん、僕も君たちの鳴き声がたくさん聞こえる森にしたい。ヨタカのみんながまたこの森に戻ってきてくれるように、森づくり大作戦開始だ!
ヨタ子は元気に羽ばたき、夕闇の空へと舞い上がっていきました。あおばくんはその小さな姿が森の向こうに消えていくのを見届けると、新たな決意を胸にをくわを握り直しました。
こうして、ヨタ子とあおばくんの森づくり大作戦が始まりました。これから季節が巡り、森が少しずつ変わっていく中で、きっとまた二人――いえ、人とヨタカ――の笑顔(とくちばし?)が再会する日が来るでしょう。あおばくんは空を見上げ、「よし、頑張るぞ!」と静かにつぶやき、作業を続けるのでした。
はじめまして、青葉組の中井です!
こんにちは!森をつくる仕事をしている青葉組の中井といいます。この度は、応援頂き誠にありがとうございます!僕たち僕が今取り組んでいる「ヨタカの森」について紹介しますね。
まずはこれを見てほしい
まずは設計者の佐藤剛によるヨタカの森の紹介動画をご覧ください。
伐採跡地とは
皆さん、**伐採跡地**(ばっさいあとち)って聞いたことがありますか?木材として利用するために森の木を全部伐採(ばっさい)したあとの土地のことです。山の斜面に切り株(きりかぶ)や枝が残り、一見すると荒れ地のようで少しさびしい風景になります。
でも実は、ここから新しい森づくりが始まる大切な場所なんですよ。僕たちが森づくりを計画しているという場所も、まさにそんな伐採跡地です。もともとは77年育った立派なスギの「人工林」でした。つまり、約77年前(戦後まもない頃)に人の手で杉(スギ)の苗木を植えて育てた森だったんです。
長い年月を経て立派に成長した杉林ですが、最近になってめでたく伐採され、丸太は運び出されました。その結果、地面には杉の切り株や枝葉の残骸が広がり、ぽっかりと空いた森林の跡地が現れたんです。

昭和37年(1962年ごろ)の植林の様子(林野庁)

よくみると伐採したときのスギの枯れた枝葉が地面に散乱していますね。
「山焼き」を行った!?
この伐採跡地では、伐採の翌年に伝統的な焼畑農法である「山焼き」を実施しました。残った枝や草をその場で焼いてしまうなんて、ちょっと驚きますよね。どうしてそんなことをしたのか、不思議に思うかもしれません。
実は、焼畑をしたのはこの地域で伝統的に行われれている「赤かぶ」栽培のためなんです。火で燃やすことで邪魔な草木を一掃し、灰(はい)を土地に還元して天然の肥料にする効果があるんです。そこに種をまくととってもおいしい赤かぶができます。



採れた赤かぶは生産している板垣さんが販売しているから、是非買ってみてくださいね!
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ヨタカの森づくりスケジュール
ヨタカは、毎年4~5月頃に日本に飛来し、7月頃には雛が孵化し、2週間ほどで巣立ちます。この現場の斜面上部には、ケヤキを中心とした広葉樹林があり、この伐採跡地がヨタカの子育てに適しているのではないかと考えています。
私たちはこの小さな現場で、**もともとスギしか植わってなかった時よりもヨタカをはじめとする生物多様性を拡張しながら、木材になる樹木も育てていきたい**と考えています。実際、本当に巣作りしてくれるかは奇跡を待つようなものですが、**過去には僕たちの作業現場でもヨタカが子育てしていることも確認**しています。見つけてくれたときに営巣しやすいように作業を行っていく予定です。
**◎2024冬(降雪前)**
・広葉樹がどのくらい芽吹いているかを調査し、何本植林するかどうか決める。
・ヨタカが気に入ってくれるように枯れ葉や小石をあえて整理せず自然のままにしておく。
**◎2025春以降**
・ヨタカが来たらわかるように、ボイスレコーダーを設置し必要に応じて夜間調査も実施する。
・雪解けと同時に植栽を行い、できるだけ早めに植林作業を完了(ただし雪解けによっては4月以降になる可能性も十分ありますのでこのあたりは努力目標とさせてください)。
・(もしヨタカが巣作りしている場合には)夏の草刈りはヨタカが分散及び移動した後に行う。
森をつくるぞ
さて、この伐採跡地をこれからどのように新しい森にしていくのか、**森づくり計画**についてお話しします。僕たちは現場の状況を踏まえて、この跡地を大きく二つのエリアに分けて森林再生を図ることにしました。一つは自然に任せる**天然更新エリア**、もう一つは人の手で苗木を植える**植林エリア**です。
この現場の上にはケヤキを中心とする森が広がっており、種が飛んできたり地面にもともと埋まっていたものが芽を出して既に広葉樹の若木が自分たちの力で育ち始めています(末尾に樹種リストあり)ので、この部分は自然の再生力にゆだねてみることにしつつ、適宜人の手で手助け(例えば一部の草刈りなど)をするつもりです。



次に、斜面下部は植栽エリアとして計画しています。山焼きを行った場所ですね。ここには僕たちの手でコナラの苗木を約1300本くらい植える予定です。コナラは日当たりの良い場所を好み、根をしっかり張れば乾燥にも強いので、斜面の下部でもきっと元気に育ってくれるでしょう。
特に周辺には水が流れる沢もあるのでカエルなどの両生類も集まります。そうした環境とも連続してつながることで様々な生き物が往来してくれることを期待しています。

「森の便り」の予定
今のところ以下の内容でお送りしていきます。予告なく変更されることがありますが、森の面白さが伝わるようにがんばって書いていきますので、たくさん期待して待っていてください!
### **2025年の配信スケジュール**
春ごろ:ヨタカってどんな生き物?
夏ごろ:なぜコナラ?コナラの不思議に迫る
冬ごろ:山焼き後の変化とは?山が燃えた後の植物を追え
さいごに
この伐採跡地をこれからあおばくんと仲間たちが森にしていきます。どのように移り変わっていくのか、どうぞお楽しみに!